東京高等裁判所 平成2年(ネ)2609号 判決 1992年10月20日
控訴人(一審本訴原告・反訴被告)
株式会社シャンソン化粧品
右代表者代表取締役
川村修
右訴訟代理人弁護士
宮原守男
同
平井廣吉
同
倉科直文
被控訴人(一審本訴被告・反訴原告)
奴田原信一
被控訴人(一審本訴被告)
大中林
被控訴人(一審本訴被告)
井垣義雄
右三名訴訟代理人弁護士
森博行
主文
一 原判決を次のとおり変更する。
二 被控訴人らは、控訴人に対し、各自金四六三一万八一四〇円及びこれに対する昭和五八年四月一日から右支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。
三 控訴人のその余の請求を棄却する。
四 被控訴人奴田原信一の反訴請求を棄却する。
五 訴訟費用は、第一、二審、本訴、反訴を通じて一〇分し、その一を控訴人の負担とし、その余を被控訴人らの負担とする。
六 この判決第二項は、仮に執行することができる。
事実
(申立て)
一 控訴人
1 原判決中、控訴人の敗訴部分を取り消す。
2 被控訴人らは、控訴人に対し、各自金四八八一万八一四〇円及びこれに対する昭和五八年二月一日から右支払済みまで日歩五銭の割合による金員を支払え。
3 被控訴人奴田原信一の反訴請求を棄却する。
4 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。
5 第二項につき仮執行宣言。
二 被控訴人ら
本件控訴を棄却する。
(主張)
次のとおり付加、訂正するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決三枚目裏二行目の「営業所」の次に「と称する委託先の」を、同四行目の「ポイント」の次に「と称する再委託先」をそれぞれ加え、同五行目の「長」を「の責任者」と改め、同六行目の「セールス」の次に「と称する販売員」を、同七行目の末尾に「被控訴人奴田原信一(以下「被控訴人奴田原」という。)は、控訴人から右シャンソン化粧品等の販売委託を受け、高知市において営業所(以下「高知営業所」という。)を経営していた者である。」をそれぞれ加え、同八行目の「信一」から同九行目の「という。)」までを削り、同四枚目裏九行目の「解除されたとき」の次に「、又は本件契約が期間満了により終了したとき」を加え、同五枚目表六行目の「による」を「、又は期間満了による終了の場合の」を加える。
2 同六枚目表三行目の「昭和」から同四行目の「入り」までを「昭和五五年一〇月頃から健康食品販売の準備に着手し、昭和五七年二月二六日にはその商標登録の出願をするなどして着々と準備をし」と、同六行目の「大会」を「販売促進大会(以下「全国大会」という。)」とそれぞれ改め、同一〇行目の次に行を改めて次のとおり加える。
「 のみならず、昭和五七年五月までに、資生堂(昭和五六年)、カネボウ化粧品(同年一〇月)、小林コーセー(昭和五七年二月)、日本メナード化粧品(同年三月)、ポーラ化粧品本舗、ノエビア(同年四月)などの化粧品会社が相次いで健康食品の販売を開始していたことは周知の事実であったから、被控訴人奴田原においては、早晩控訴人も健康食品の販売を開始するであろうことを容易に知ることができる状態にあった。」
3 同六枚目表末行の「被告奴田原」から同裏九行目の「働きかけた上」までを「被控訴人奴田原は、昭和五七年九月に健康食品(「サンレード健康食品」と称した。)及び化粧品等の販売を目的とする株式会社サンレード(本店所在地岡山市。以下「サンレード」という。)及びサンレード高知販売株式会社(本店所在地高知市。以下「サンレード高知」という。)を設立し、自ら、サンレードの代表取締役、サンレード高知の取締役に就任し、長男の洋介(以下「洋介」という。)をサンレード高知の代表取締役、妻の節(以下「節」という。)を同社の監査役に就任させ、同月五日ころからサンレード健康食品の販売を開始し、同年一〇月二一日には、サンレードの本店を東京都中央区に移転して健康食品の販売を全国規模に拡大しようとした。被控訴人奴田原は、サンレード健康食品の販売に当たっては、高知営業所管内や他の営業所管内の控訴人の販売網を利用して、その販売網に属する一部の者に対し、サンレード健康食品の取扱い及び販売をするように働き掛けたものであるが」と改める。
4 同七枚目表四行目の「九月」の次に「初旬」を加え、同七行目から同八行目にかけての「販売している」を「発売する」と、同裏七行目の「八、九月頃、被告奴田原関係の」を「八月二五日、」とそれぞれ改め、同八行目の「ポイント」の次に「の責任者」を加え、同行の「鈴木」を「鈴江」と改める。
5 同八枚目表七行目の「(五)」を削り、同行の「ポイント」の次に「の責任者」を、同九行目の「すすめ、」の次に「困った右篠原が原田に相談をしたこともあった。」をそれぞれ加え、同行の「また、」以下を行を改め、その前に次のとおり加える。
「 (五) 被控訴人奴田原は、他の営業所の所長らにも働き掛けをし、その働き掛けに応じて岡山営業所の里見二男(以下「里見」という。)、高松営業所の宮脇虹陽(以下「宮脇」という。)、防府営業所の松葉純治、山陰営業所の亀川昌一郎、東愛知営業所の柴田明、広島営業所の加村耕一、福岡営業所の鹿毛守元らは、サンレード健康食品の取扱い、販売をするようになった。」
6 同八枚目裏一〇行目の「アメリカ」の次に「製品」を加え、同九枚目表四行目の次に行を改めて次のとおり加える。
「 (七) 被控訴人奴田原は、さらに、同年九月九日に「販売員の皆様へ健康食品の販売について」と題する書面を作成、配付したが、同書面では、「シャンソンも遅れ馳せ乍ら、この秋にビタミンCとEを発売する様子ですが、而し、考えて見ると、化粧品メーカーは矢張り化粧品のイメージが強く、健康食品、ビタミン剤と云っても何んとなく、「効果面で訴える力が弱く」」と記載し、控訴人の健康食品は、効果面で不十分であるかのように宣伝し、また、「今回私達シャンソン主要営業所長グループ一〇名位が共同で扱う商品」とも記載してサンレード健康食品があたかも主要営業所長一〇名という多数が共同で扱う商品であるかのような過大で虚偽の表現をして煽動をしている。
(八) 被控訴人奴田原は、昭和五七年五月には、控訴人が他の化粧品会社同様に早晩健康食品の販売をするであろうことを容易に知り得べき状況にあったにもかわらず、自ら健康食品の販売計画を樹立して推進し、同年七月一九日には控訴人が健康食品の発売を公式に発表しているのであるから、控訴人の長年の営業所長としては、健康食品の販売は控訴人と競争関係になるものであることを考慮し、控訴人の事前の承認を得るべき注意義務ないし誠実義務があるのに、控訴人の承認を受けずに控訴人系列の販売網を利用して自己の健康食品を販売することを画策し、控訴人と敵対して一方的にこれを強行した。
被控訴人奴田原のこのような行動は、控訴人との間の信頼関係を著しく破壊する背信行為である。
5 仮に、右契約解除の意思表示が無効であったとしても、本件契約は、昭和五八年三月三一日(予備的に昭和六一年三月三一日)の経過により期間満了により終了した。」
7 同九枚目表五行目の「5」を「6」と、同九行目から同一〇行目にかけての「の残高金は」を「代金の残高」と、同末行の「損害金」を「清算金」とそれぞれ改め、同裏二行目の「二二」の次に「日」を、同一〇行目の「被告」の前に「右」をそれぞれ加え、同一〇枚目表一行目の「6」を「7」と、二行目の「解除に基づく損害金」を「終了による清算金」と改め、同五行目の「遅延損害金」の次に「(本件契約が期間満了により終了したと認められる場合には、期間満了の日の翌日である昭和五八年四月一日から右支払済みまで商事法定利率の年六分の割合による遅延損害金)」を加える。
8 同一〇枚目表七行目の「が」から同裏二行目の「ある」までを削り、同一一枚目表二行目の「一〇」から同九行目の「系列」までを「サンレード及びサンレード高知を設立し、被控訴人奴田原、洋介及び節が控訴人主張のとおりの役員に就任したこと、被控訴人奴田原が高知営業所管内や他の営業所管内」と改める。
9 同一一枚目裏四行目から同六行目までを次のとおり改める。
「 (三) 同(三)ないし(七)の事実は否認する。
(四) 同(八)は争う。
5 同5の主張は争う。
控訴人と被控訴人奴田原との商品販売委託契約は、昭和二六年頃から、継続してきたものであり、このように長期間、反復更新されてきた契約関係の実態にかんがみると、本件契約においては期間の定めは形骸化し、実質上期間の定めのない契約と異ならない状態にあったというべきであるから、期間が満了しても当然には契約関係は終了しない。したがって、契約が終了したというには、単に期間が満了したということだけでは足りず、更新されなかったことが必要であるが、控訴人は、契約不更新の事実を主張していないのであるから、その期間満了による契約終了の主張は失当である。」
10 同一一枚目裏七行目の各「5」をいずれも「6」と改め、同八行目の「商品」の次に「代金」を加え、同九行目の「解除」を「契約終了」と、同一〇行目から同末行にかけての「原告主張の解除が有効であるとすると」を「契約の終了に関する控訴人の主張が認められるとすると」と、同一二枚目裏一行目から同二行目の「あったとしても」までを「本件契約は継続的取引契約であるから、控訴人主張のように、契約期間中であっても、三か月前に予告することによって本件契約を解除することができる旨の特約があっても、契約の当事者に信頼関係を破壊するような事情がない限り、右特約による解除は許されないというべきであるが」と、同三行目の「なく」を「なかったし、また」と、同九行目の「内」を「の中」とそれぞれ改め、同一三枚目表末行の「原告が」の次に「、右各営業所の」を加え、同裏一行目の「販売業」を「販売契約」と改める。
11 同一四枚目表四行目の「が」を「は」と改め、同一五枚目表六、七行目の各「被告」の次に「ら」を、同裏四行目の「五七」の次に「年」をそれぞれ加え、同八行目の「解除は」を「解除には、被控訴人奴田原につき、当事者の信頼関係を破壊するような事情がなく、また、右解除が」と、同一八枚目表六行目の「本件契約は約定上更新後三年を期限とされている」を「本件契約の期間は三年である」とそれぞれ改め、同九行目の次に行を改めて、次のとおり加える。
「三 控訴人の抗弁
1 控訴人は、被控訴人奴田原に対し、四八八一万八一四〇円の本訴清算金債権を有している。
2 控訴人は、同被控訴人に対し、平成二年一一月一三日の当審第一回口頭弁論期日において、右清算金債権をもって、同被控訴人の反訴請求債権と対当額において相殺する旨の意思表示をした。
四 抗弁に対する被控訴人奴田原の認否
抗弁1は争う。」
(証拠関係)<省略>
理由
一本訴請求についての判断は、次のとおり、付加、訂正するほか、原判決の説示するとおりであるから、原判決一八枚目裏二行目から同三七枚目裏一〇行目までを引用する。
1 原判決一八枚目裏末行の「内」を「の中」と改め、同一九枚目表八行目の「争いのない」の次に「甲第七九号証の一ないし五、」を、同末行の「証人伊藤嘉彦」の前に「弁論の全趣旨により原本の存在及び成立の認められる乙第四六号証、」をそれぞれ加え、同行の「及び」を「、」と改め、同裏一行目の「宮脇虹陽」の次に「及び当審証人佐藤淑彦」を加え、同裏四行目の「虹陽」から同五行目の「う。)」まで及び同行の「二男」から同六行目の「う。)」までを、同二〇枚目表二行目の「ワンマンで」をそれぞれ削り、同六行目の「そこで」から同行の「昭和五七年」までを「控訴人側は、共栄会の所属する営業所所長の発言が過激であるとして、好意的ではなかったが、共栄会側の申入れにより会合を開いたことがあり、昭和五七年にも、共栄会の求めに応じて同年」と、同九行目の「トップクラスの、」を「トップクラスの営業成績を挙げていた」と、同二一枚目表七行目の「販売促進会議」を「大会」と、同行から同八行目にかけての「ポイント・」を「ポイントの責任者及び」とそれぞれ改め、同九行目及び同末行の各「ポイント」の次に「の責任者」を加える。
2 同二一枚目裏七行目の「証人」の前に「乙第二四号証、」を、同二二枚目表六行目の「第八三号証」の前に「同証言により昭和五七年七月一九日及び九月一日の控訴人全国大会の際の写真であることが認められる」をそれぞれ加え、同裏一行目の「及び証人田中弓夫」を「、証人田中弓夫及び当審証人佐藤淑彦の」と、同二三枚目表六行目から同七行目にかけての「急遽、本舗かつ」を「本舗及び」と、同末行から同裏一行目にかけて及び同三行目の各「全国販売促進会議」を「全国大会」と、同二四枚目裏一行目の「ほとんどは」を「約九〇パーセントは」と、同四行目の「自ら」から同八行目の「した」までを「サンレード及びサンレード高知を設立し、自らサンレードの代表取締役、サンレード高知の取締役に就任し、長男洋介をサンレード高知の代表取締役に、妻節を同社の監査役に就任させた」と、同二五枚目表三行目の「四一」を「第四一」と、同裏二行目から同三行目にかけての「協和」から同七行目の「協和ライフの」までを「協和醗酵株式会社(以下「協和醗酵」という。)が自社の製品である健康食品を販売する者を探していることを聞き及び、昭和五七年の正月ごろ美喜子と原田に対し右販売を行うことを勧誘した。しかし、美喜子は、自分達だけで販売するのは無理であるから、被控訴人奴田原も加えて共同で販売しようと考え、同年五月三日、右」と同一〇行目の冒頭から同末行の「ともに」までを「ところが、被控訴人奴田原は、宮脇及び里見に右健康食品販売の話を持ち掛け、同人らを伴って、同月一二日ころ」と、同二六枚目表三行目の「進め」を「求め」とそれぞれ改める。
3 同二六枚目表五行目から同八行目までを次のとおり改める。
「 被控訴人奴田原、里見及び宮脇は、同月二二日に宮脇宅に集まって、健康食品の販売について協議をし、同年六月二日に協和醗酵の社員らを里見宅に呼んで話を聞き、更に、同月一七日に再度上京して協和醗酵の社員と打合せをして健康食品の販売を取り扱うこととし、三名が出資して株式会社を設立して取締役に就任することとした。美喜子及び原田を共同経営者にすることは里見が反対し、また原田が辞退したので実現しなかった。
他方、美喜子は、同月下旬ころ、武晴から、被控訴人奴田原が美喜子及び原田を含めずに里見、宮脇の三名で会社を設立しようとしていることを聞かされ、自分が健康食品の販売をする話を持ち掛けたにもかかわらず、同被控訴人らが自分及び原田を排除したことを怒り、同被控訴人と美喜子との間に確執が生じた。」
4 同二六枚目裏二行目から同七行目までを「被控訴人奴田原、里見及び宮脇は、昭和五七年九月初旬にサンレード健康食品の発売を開始し、同月一〇日にサンレードを設立し、被控訴人奴田原及び里見が同社の代表取締役に、宮脇が取締役に就任した。また、被控訴人奴田原は、サンレード高知を設立した。」と改める。
5 同二六枚目裏九行目の「原告主張」から同一〇行目の「系列」までを「サンレード健康食品の販売に当たり、高知営業所管内や他の営業所管内」と、同二七枚目表三行目の「ないし三」を「、二」とそれぞれ改め、同五行目の「証人」の前に「乙第一二号証の一、二、」を加え、同一〇行目の「第三七号証」から同末行の「ないし四」までを「第四六号証の一、二、四、第四七号証の一」と改め、同裏二行目の「被告」から同四行目の「二、」まで、同九行目の「第三七」から同一〇行目の「第四一号証の一、」までをそれぞれ削り、同末行の「第四八」の前に「第四七号証の一、」を加える。
6 同二八枚目裏四行目の「括弧内の部分」を「甲第一〇号証の一、第一一号証、第一二号証の一のうち各三枚目の書面。以下「比較書面」という。」と、同九行目の「ことわった」を「断った」とそれぞれ改め、同二九枚目表二行目の「訪れ、」の次に「同人に対し」を加え、同四行目の「動機」を「勧誘」と、同七行目の「商品」から同九行目の「示唆して」までを「持参した健康食品を示して協和醗酵の製品であることを告げ、化粧品より健康食品が将来性がある旨、更には、控訴会社の経営方針を批判し、その営業成績は下降していて将来性はない等とも述べて」とそれぞれ改める。
7 同二九枚目裏二行目の「一方、里見は、昭和五七年頃」を「被控訴人奴田原、里見及び宮脇は、共栄会のメンバーに対しても働き掛けをし、昭和五七年七月初旬に開催された共栄会の席上、かねて宮脇が作成しておいた比較書面を配付して健康食品の販売を勧誘した。また、里見は同月頃」と、同七行目から同八行目にかけての「共栄会参加者他」を「共栄会会員及び非会員」とそれぞれ改め、同行の「郵送し」の次に「、同年九月には、「化粧品メーカーの健康食品は、効果面で訴える力が弱い、シャンソン主要営業所長グループ一〇名位が協和醗酵の製品を扱う。」等と記載した書面(甲第二九号証)を作成し」を加える。
8 同三〇枚目表七行目の「嘉彦」の次に「、当審証人佐藤淑彦」を加え、同九行目の「原告の」の次の「、」を削り、同末行の「滝」を「前記滝真司」と、同裏一行目の「柴田」を「前記柴田明」とそれぞれ改め、同二行目の「呉服」の前に「健康食品、」を加え、同七行目を「したことはなかった。」と改める。
9 同三〇枚目裏九行目冒頭に「前記甲第四七号証の一(但し、後記措信しない部分を除く。)、乙第一二号証の一、二、第一五、第三〇号証、」を加え、同一〇行目の「第一〇、第一二号証の一、二」を「第一〇号証」と改め、同行から同末行にかけての「第一五号証」から同三一枚目表二行目の「除く。)、」までを削り、同八行目の「乙」を「甲」と改める。
10 同三二枚目表二行目及び同裏一行目の各「翌」をいずれも「同年」と、同六行目の「翌」を「昭和」と、同裏末行の「長」を「の責任者」と、同三三枚目表一行目の「開拓し」を「増やし」と、同七行目の「奪ってしまった」を「吸収してしまった」とそれぞれ改める。
11 同三四枚目表三行目の「ちえ子」を「ちゑ子」と、同行の「みつる」を「みつ子」と、同四行目の「福田」を「福本」と、同裏二行目の「進言」を「従業員からの示唆」と、同三五枚目表二行目の「期間を」を「期間が」とそれぞれ改め、同九行目の「継続的」の次に「取引」を加え、同裏六行目の「前記」から同三六枚目表六行目までを「前記認定の事実によれば、被控訴人奴田原は、昭和五七年五月中旬頃、協和醗酵の製造する健康食品の販売を行うため、同じく控訴人の商品を取り扱っている営業所所長の里見、宮脇と相談して、同年六月下旬頃三名で共同して会社を設立して経営することを計画していたところ、同年七月一九日に控訴人においても健康食品を販売する計画のあることを知り、したがって、控訴人との間で同種商品の販売が競合することとなることを認識しながら、自分らの計画を変更し、又は控訴人と協議をすることなく、他の営業所所長及び自己傘下のポイントの責任者にサンレード健康食品の販売を勧誘、依頼し、その際、サンレード健康食品の有利性を強調するあまり、控訴人が販売しようとする健康食品について批判的な表現をし、さらに、営業所所長らに対しては、控訴会社の経営姿勢等を非難、批判し、控訴人の将来性に対する疑問を提示したものである。」と改める。
12 同三六枚目表七行目の「前記に認定したところによると」を「前記のとおり」と、同八行目の「実行にとりかかった」を「協和醗酵と交渉に入った」と、同裏一行目の「発表した」を「公表した同年七月一九日の」と、同五行目の「もの」を「商品」と、同六行目から同七行目にかけての「手広く携わっていたこと」を「これを手掛けているものが少なくなかった上、前記甲第一号証によれば、本件契約において、控訴人と被控訴人奴田原との間に同被控訴人が委託商品のみを販売しなければならず、他の商品の販売をしてはならないとの約定はなかったと認められること」と、同三七枚目表一行目の「また」から同八行目の「こと」までを「被控訴人奴田原らが他の営業所長や傘下のポイントの責任者に対し、控訴人の取り扱う健康食品や控訴人の経営姿勢等についてした批判等の中には、穏当を欠き、行き過ぎというべき部分も見られるが、当時、控訴人の営業成績は芳しいものではなく、同被控訴人らのみならず、他の営業所長の間にも控訴人の経営姿勢等に対する不満や批判が存在していたが、控訴人においてはこれに対して、必ずしも適切な対応がされていたとはいえない面もあり、被控訴人奴田原らが行った批判は限られた相手方に対してのみなされており、外部に対して控訴人を中傷したものでなく、前記里見が行った甲第二八号証の配付には同被控訴人が関与したとは認められないこと」とそれぞれ改め、同一〇行目の「のみならず、」の次に「サンレードを設立して健康食品の販売をし、控訴人を非難する言動をしたのは、被控訴人奴田原のみではないのに、契約解除の対象とされたのは同被控訴人のみであって、解除に至るまでの間控訴人側が直接被控訴人奴田原に対して事情の説明を求めたり、注意をしたりしたことはなく、」を加える。
13 同三七枚目裏末行から同三八枚目表二行目までを次のとおり改める。
「 3 そうすると、本件契約の解除の主張は理由がない。
三 次に、期間の満了による本件契約の終了の主張について判断する。
1 本件契約において、契約の有効期間が昭和五五年四月一日から三年間と定められていることは当事者間に争いがない。
2 被控訴人らは、本件契約は、長期間にわたり反復更新されてきたものであるから、実質的には期間の定めのない契約と異ならないというべきであり、控訴人において、契約不更新の事実を主張すべきであると主張する。
しかし、控訴人と被控訴人奴田原との間に締結された商品販売委託契約は、昭和二六年頃から更新を重ねて継続してきたいわゆる継続的取引契約であり、期間が満了した都度更新契約を締結することにより継続してきたものであるが、いわゆる継続的取引契約であるからといって、当然更新されるとか、更新請求ないし一定の事由を具備した更新拒絶のない限り更新されると解すべき根拠はないばかりでなく、本件契約においては、自動的に更新する旨の特約はもちろん、更新に関しては何の約定も存しないとは前記甲第一号証及び弁論の全趣旨から明らかである。そうすると、本件契約においては、契約の更新が当然予定されていたものではなく、契約の更新のためには双方の合意が必要であり、契約期間満了の際、各当事者には、契約期間中に生じた事情等を考慮して契約関係を終了させることを望む場合には更新をしないことを選択できる権利が留保されていたものというべきであるから、被控訴人らの右主張は失当であり、また、本件契約が合意により更新されたことは被控訴人らの主張しないところである。
四 したがって、本件契約は、昭和五八年三月三一日の経過により終了したものというべきである。また、本件契約においては、契約期間の満了により契約が終了したときは、被控訴人奴田原は、控訴人に対し、直ちに、それまでに販売した委託商品の代金を支払い、未販売委託商品を返品し、もしくはこれに代わる商品代金の全額を即時清算して支払う旨及び同被控訴人が右支払または返品を怠ったときは、その翌日から日歩五銭の割合による損害金を付加して支払う旨の約定がされていることは前記のとおりである。そして、被控訴人奴田原の控訴人に対する昭和五七年一月末日における未販売委託商品代金の残高が八七四九万〇九〇〇円であることは当事者間に争いがなく、これから当事者間に争いがない控訴人が支払うべき四〇パーセントの販売委託手数料、同被控訴人の入金した前受金一五〇万円、同被控訴人の預託した保証金二一七万六四〇〇円を控除した四八八一万八一四〇円が本件契約の終了により被控訴人奴田原が控訴人に対して支払うべき清算金の額となるから、被控訴人らは、控訴人に対し、各自右四八八一万八一四〇円及びこれに対する本件契約の終了の日の翌日である昭和五八年四月一日から支払済みまで日歩五銭の割合による約定遅延損害金の支払義務を負うものというべきである。
しかし、控訴人は、契約終了後の遅延損害金については、商法所定の年六分の割合による請求をしているから、遅延損害金の請求については右の範囲で認容すべきものである。」
二被控訴人奴田原の反訴請求に対する判断は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決の説示するとおりであるから、原判決三八枚目表三行目から同四〇枚目裏一行目までを引用する。
1 同三八枚目表七行目の「原告が」を「原告の従業員が昭和五八年二月一日以降」と改め、同八行目の「ことは、」の次に「前記のような事情の下では、被控訴人奴田原に対する不法行為には当たらないが、」を加え、同裏一行目から同三九枚目裏四行目までを削り、同六行目の「五」の次に「、第三三号証の一ないし四」を加え、同七行目の「昭和」から同四〇枚目表六行目までを「昭和五七年の間に被控訴人奴田原が控訴人から得た委託商品の販売手数料の額から、同被控訴人が再委託先に支払った手数料を控除した残額は年間三五〇〇万円を下らず、一方、昭和五四年から昭和五七年の間の同被控訴人の必要経費はほぼ年間二〇〇〇万円であったと認められるから、同被控訴人は委託商品の販売により年間一五〇〇万円(月間一二五万円)の利益を挙げていたものと認められる。したがって、被控訴人奴田原は控訴人から取引を停止されなければ、昭和五八年二月一日以降本件契約の終了した同年三月末日の間においても、月額一二五万円の利益を得ることができたものと推認されるから、被控訴人奴田原は控訴人の取引停止により合計二五〇万円の損害を被ったものというべきである。」と、同八行目の「本件契約の不当破棄」を「取引の停止」とそれぞれ改める。
2 同四〇枚目裏一行目の次に行を改めて次のとおり加える。
「3 したがって、被控訴人奴田原は、控訴人に対し、債務不履行による損害金二五〇万円の支払を求める権利を取得したというべきである。
4 控訴人の相殺の抗弁について
前記のとおり、控訴人は、被控訴人奴田原に対し、清算金四八八一万八一四〇円の支払を求める権利を有するが、控訴人が、平成二年一一月一三日の当審第一回口頭弁論期日において、右債権をもって被控訴人奴田原の有する右損害賠償請求権と対当額において相殺する旨の意思表示をしたことは、当裁判所に顕著である。
そうすると、被控訴人奴田原の右損害賠償請求権は右相殺により消滅したこととなる。
三 したがって、被控訴人奴田原の反訴請求は理由がない。」
三以上の次第で、控訴人の本訴請求は、被控訴人らに対し、各自右相殺後の清算金残金四六三一万八一四〇円及びこれに対する昭和五八年四月一日から右支払済みまで年六分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し、その余は棄却し、被控訴人奴田原の反訴請求は棄却すべきであり、本件控訴は右の限度で理由があるから、原判決を変更し、訴訟費用の負担について、民事訴訟法九六条、八九条、九二条本文、九三条一項、仮執行の宣言について同法一九六条一項を適用して主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官菊池信男 裁判官奥田隆文 裁判官新城雅夫は、転補のために署名押印することができない。裁判長裁判官菊池信男)